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【暗号資産】【仮想通貨】暗号資産界の寵児「FTXグループ」はなぜ破綻したのか?今後の暗号通貨の行方は?

2022年11月に入り、「FTXグループ破綻」というニュースが暗号資産市場を一気に駆け巡りました。同社グローバル・アンバサダーを務める大谷翔平選手やプロテニスプレーヤー大坂なおみ選手まで損害賠償訴訟を提訴されるなど、彼らがスポンサーになっている暗号資産取引所として知っている方もいると思います。米国では大手コインベースの次にナスダックへ上場するのではないかと噂されるほど大注目の取引所でした。

このように世界でも有数の暗号資産取引所が瞬く間に破綻申請することになり、2014年に発表されたマウントゴックス社破綻と同様にまたしても莫大なお金が暗号資産市場から失われました。これを受けて暗号資産に対する悪い印象が強まることが予想されます。

ここでは、まともな成功者と思われたFTXグループがなぜ倒産したのか、それによって今後の暗号資産市場へどのような影響が及びうるのかについて、筆者が中立的な目線で解説します。

FTXとアラメダ・リサーチの関係性

FTXグループは、サム・バンクマン・フリード(通称:SBF)という人物が立ち上げた、アラメダ・リサーチという暗号資産トレーディング会社から始まりました。2017年に設立されてからは暗号資産の国ごとの価格差を利用した裁定取引で主に稼いでいましたが、事業が拡大するなかで、暗号資産市場のマーケットメイクや投資ファンドも手がけるようになりました。

SBFは2019年にアラメダ・リサーチとは別で暗号資産取引所FTXを立ち上げました。その際に独自の暗号資産としてFTTトークンを発行し、資金調達も実施しました。FTTトークンは、ユーザーが取引所の手数料割引を受けられるなどの用途があり、特に2021年に入ってからはFTXの成長とともに価格を大きく伸ばし、2022年にはFTXの企業評価額が数兆円規模となり、SBFはForbes長者リストにも名前を連ねました。

FTXグループは今年5月に起きたテラショック事件後も、破綻企業の救済に動くなどホワイトナイトのような立ち振る舞いをしながら、自らの事業の堅調さを市場でアピールしていました。

なお、アメラダ・リサーチはSBF個人に10億ドル(約1400億円)を融資していた。こんな会社に大手ファンドなどが会社の資産状況を十分にチェックもせずにこぞって出資していたのだから呆れてものも言えない。

FTXショックは何が起きたのか?

このように一見順風満帆にみえたFTXグループですが、コインデスクが今月初旬に出したアラメダ・リサーチのバランスシート情報(2022年6月時点)によって、からっぽともいえる財務状況が明らかになった。総資産額の大半をFTTトークンが占めており、その他資産もFTXと関わりある暗号資産の割合が大きく、現金同等物は1%未満でした。さらにはFTTトークンを担保にした負債があることもわかり、FTXとアラメダ・リサーチの間で資金融通していた疑いが強まりました。まさに現代版錬金術です。

このリーク情報によってFTXとアラメダ・リサーチの流動性危機に対する懸念が広がり、FTXの取り付け騒ぎに発展するなかでFTTトークンは暴落しました。大手暗号資産取引所バイナンスが救済的な買収を検討すると一時は発表しましたが、その翌日には撤回され、コインデスクの記事からわずか10日間あまりでFTXグループは破綻に追い込まれました。これで騒動はひと段落するかに思われましたが、その直後にはハッキングによってFTXから数百億円もの資産が不正に引き出される事態となり、現在も不正アクセスによる資産流出が続いているようです。

FTXグループ破綻の真相については米国当局を中心に現在も調査中ですが、FTXとアラメダ・リサーチはFTTトークンの価格を釣り上げることによって会計上の評価を不当に良くみせていたといわれています。それによって新しい投資家を呼び込み、そこで得た資金でさらに価格を釣り上げることを繰り返していたとされています。このような自転車操業を続けるにあたって、FTXが顧客資産を流用していたことも報じられています。思い返せばテラショック事件後あるいはもっと前からFTXグループの財務状況は壊滅していたのかもしれません。

FTXグループが破綻申請してからは、SBFがコンプラ部門を無視して自由に資産を動かすことができたなど、社内のガバナンス態勢が崩壊していたことを示す情報が次々と明るみに出ています。今回の事件について、暗号資産ならではの問題がなかったとはいいませんが、その本質はエンロン事件のような、これまでの金融の歴史で繰り返されてきた問題にありそうです。

ちなみにFTXの破綻処理にあたっている新CEOはエンロン破綻処理を監督した人物ジョン・レイ3世です。

FTX社内では経費申請をチャットの絵文字で承認するなどのずさんな出納管理いたり、社内での情報やり取りを一定時間たつとメッセージが自動消去されるアプリでしており、その使用を従業員にも推奨していたこと、また本拠地バハマで会社の資産を流用して従業員が不動産等を購入していたり、顧客から預かったとされる仮想通貨は本来あるべき額のほんの僅かだったなど、次から次へとずさんな経営実態が明るみになっています。

 

FTXショックの今後の影響は?

FTXグループ破綻によって、投資家はもちろん、取引先や関連先への影響が懸念されています。FTXが救済を発表していた暗号資産レンディング企業のブロックファイはユーザーからの引き出しを停止し、連鎖破綻が危ぶまれています。また、FTXとつながりの深いソラナ関連プロジェクトは時価総額が軒並み落ち込んでいます。ここからさらに暗号資産市場でネガティブな動きがでる可能性はあると思われます。

FTXグループ破綻をきっかけに暗号資産規制が強まることは間違いないでしょう。

米国を中心に暗号資産関連企業に対する情報開示制度や資本規制などの厳しいルールが整備されることが予想されます。FTX本体がバハマ拠点であったことを理由に米国が活動を管理しきれなかったことを踏まえると、国際共通規制の必要性も改めて議論されることになりそうです。

FTXグループ破綻によって暗号資産市場は氷河期に入ったともいわれています。

コインチェック事件後の流れを振り返ると、米国において暗号資産規制がきちんと整備されるまでは相場も弱い状況が続く可能性も高いと思われます。

一方、日本では他国と比較して暗号資産に関する法整備も進んでいます。とはいえ、今後の信頼回復には、業界の健全性を確保するための銀行の預金保険機構のような枠組みの確立が急務です。

またソフトバンクグループ(傘下のビジョン・ファンド)が1億ドル(約140億円)やシンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスが2億7500万ドル(約383億円)、米ベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタルが2億1000万ドル(約294億円)を出資しており、名だたる大手出資者が損失計上を余儀なくされています。

今のところ、FTXジャパンは日本の顧客の資産は保全されており、年内をめどに返却したいと述べています(11/23日経新聞記事による)。

まとめ

こうした事件がたびたび発生することで、暗号通貨そのものの信頼性が揺らいできています。

筆者は暗号資産は価格決定の理由の説明がつかない資産で、単なる需給関係でだけ価格が決まっているものだと考えています。

一方で金や株式、債券といった資産は一定価格決定の理由の説明がつきます。こうした従来から皆が投資している投資先がたくさんあるのに、わざわざ様々な危険性をはらむ暗号資産にあえて投資する必要があるのでしょうか?

暗号資産への投資を考えている人は、本当に暗号資産が投資すべき対象なのかを今一度よく考えてみた方がよいと思います。

着実に将来の老後資産を築くためにも、株式を中心とした長期資産形成で資産を増やしていくことが重要です

やはり、安全に資産を増やしていくには、長期資産形成を前提とした「資産形成(長期・積立・分散)」を地道に続けていくことが何よりも重要です。

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